愛ぞつもりて 淵となりぬる

熱には熱を、愛には愛を

良い作品に出会ったんだ。 望くん初主演舞台 MORSE-モールス- を見て


※舞台が千秋楽を迎えたのでセリフなども込みで感想を書きます。個人的な意見・感想ですので苦手な方はお気をつけください。


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すごく良い作品に出会ったんだ。




12月10日、雨の降る日にシアターBRAVA!に足を運び、楽しみにしていた望くん初主演舞台のMORSEを観に行って来た。


単純にお話がすごく面白そうだから、望くんを見に行くというよりは完全に作品を見に行くつもりで入った。


開演のアナウンスが終わり、しばらくの間会場が静まり返る中の、冷たい風の音とフクロウの鳴き声が忘れられない。

その時点でもうみんなMORSEの世界に簡単に、そして深く引き込まれる。(引き込まれる上に出してくれない、出られない) 終わった時にふと気付いたがこの舞台、“音” もまた印象的ですごくキーになってた。モールス信号の音、電車の音、時計の音、エリが裸足で走り回るペタペタという乾いた音、木箱を引きずる音…。どの音も振り返れば1つ1つすごく大切な要素が含まれてたと思う。


そしてこの舞台において「ずっと」っていうワードはすごく残酷だと思った。

オスカーはいつも孤独だった故、“ずっと” 一緒にいてくれる相手が欲しかった。
でもエリにとっては “ずっと” っていう言葉そのものが 孤独なんだ。

エリが「約束は嫌い」と言うのも ずっと一緒にはいられないからなんだろうし、今まで約束してきた相手との約束は守られなかったからなんだろうな…。

オスカーとエリだけじゃなくて、全ての登場人物がみんなどこか孤独な部分を持ってるんじゃないかな、とも思った。オスカーのママ、パパ、ホーカン、ヨンニ、ミッケだってそう。みんなどこか寂しくて、孤独だった。


エリとオスカーのダンスシーン、大好き。水上京香さんのダンスが指先まで美しくって心が奪われた。(あれからずっとあの歌聞いてるのは私だけじゃないはず)
「今僕たち 恋してる!」っていうオスカーのセリフもすごく頭に残ってる。ピュアで心がキュッと締め付けられる。



でもやっぱり1番好きなのは1番最後の電車のシーン。エリの入った木箱を壊れないように大事に撫でるオスカーの元に車掌さんがやって来て、「大きな荷物だね。何が入っているのか聞いてもいいかい?」と尋ねると、オスカーは「いろんなもの。…全部です。」と答える。

その “全部” には 2人の未来だったり、愛だったり、希望だったり、試練だったりするんじゃないかな、と。

オスカーはエリの言う「正しい世界」で生きる道を捨てて、唯一の愛であるエリを選んだんだ。自分がホーカンと同じ事になるのをちゃんと理解して。

その後に遠くをスッとみるオスカーの目には “覚悟” が現れていたと思う。


私は最後の電車のシーン、1番初めの伏線だったのか…って解釈した。


冷たく、残酷で、哀しい中にポッと一瞬あかりが灯るような愛のある美しいお話でした。




そして望くん、本当にお疲れ様でした。本当にずっと12歳の少年にしか見えなかった。無邪気で、孤独で、愛らしくて。なのに挨拶の時には、座長として堂々と振る舞う、大きな大きなものを背負った「小瀧望」だったし、みんなに向かって手を振ってはけていく時はアイドルの「小瀧望」だった。19歳で大役を任され、オスカーと出会い、見事やり切って一回りまた大きくなった望くんが今後どのように輝くのか楽しみです。




………



私の先生が昨日言っていたんだ。


「疑問が残る作品はいい作品だ」と。


観劇したみんながMORSEについて考えてる。心に重くのしかかるような何かを抱えながら会場を後にする。そのモヤモヤを晴らそうとみんなが言葉を並べるが、誰1人としてハッキリすることはできていないはず。

皆さんの目にMORSEは、オスカーは、小瀧望くんはどう映りましたか? きっと、観た人全員のそれぞれの心の中でそれぞれのMORSEが生き続けていくんだろうな。



望くんをはじめとしたカンパニーの皆様、良い舞台に出会わせてくれて、観せてくれてありがとうございました!